No.4 Tears in Heaven

飲料コーナーから迷う事なくいつもの缶コーヒーを取り出し、赤飯と五目のおにぎりを一個づつ籠に入れ、レジで会計を済ませた。

たばこの陳列棚の上のオレンジの丸い壁掛け時計は午前3時15分を指していた。

ワイパーで、はらはらとフロントガラスにうっすら積もった雪を払おうと、エンジンをかけると最近お気に入りのクラプトンのアンプラグドの一曲が、けたたましい音量で流れ始めた。

それは、先程まで街灯に照らされ所々キラキラと輝くブラックアイスバーンの高速を、眠気覚ましにと鼻歌まじりに聴いてきた為だった。

国道36号線からマックの交差点を左折すると民家もまばらになり、外気と隔絶された空間の中でリピート設定して流れていた「I must be stong~~」というフレーズと車のエンジン音だけが、恐らくこの10キロ四方で唯一静寂を破っていた事だろう。

そしてその曲のフレーズは私の頭の中でも何度となく繰り返されているのだった。

ワインディングロードを過ぎて大きく右にハンドルを切ると、支笏湖へ続くその道は、覆い被さる暗闇の林の間にヘッドライトのビームに映し出された僅かに積もった雪のアスファルトの上を、少し前に通ったであろう車のタイヤの跡が2本、どこまでも、どこまでも真っ直ぐ延びていた。

現実と釣りの世界の暗いトンネルのようなその道を早く抜け出そうと先を急いだのだった。

キャンプ場手前、ちょうど湖を右手に見下ろす丘を下りかかったとき、眼前に影絵のような樽前山の頂きが雲間から現れた。

雲と山と星、この手を伸ばせばどれも届きそうに思えるほど、宇宙の中で私は小さな小さな砂粒にも満たない存在になった。

トンネルを抜け、閉じたままの美笛のゲートと国道脇の雪山の間の僅かなスペースにバリバリと音をたてながら車を滑り込ませた。

1993年4月第1週木曜日の午前4時。
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by nijimasuo | 2007-11-28 22:23 | 湖・ダム